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 小さな白三毛野良猫物語。ーすべては彼女が壁の中に落ちたことから始まったー壁破壊で救出するぜ編

母猫はきっと戻ってこないと思う。
ここで時間をつぶすだけ子猫にはリスクが高まるだけ。
この子猫の面倒ははなが見る。
里親を探すが、見つからなければはなが飼う。
だから今から病院に連れていく。
はなは、お姉ちゃんと男性社員にそう話した。

時計を見れば19時。
まだいつもの病院がやっている。
子猫をキャリーに移して、はなとお姉ちゃんは病院に飛び込んだ。

体重290g。
柄は白三毛。
女の子。
ぷっすりオケツに刺された検便の結果は寄生虫もなく良好。
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ただし本人はピンチ。

壁の中で落下したはずだったけど、骨折も怪我もなし。
ただ、気になることは山積みだった。
口の中を見てみれば、乳歯がきちんと生えそろってる。
横耳でもないし、顔もしっかりできている。
それを考えれば、月齢は最低でも1カ月は超えているはず。
なのに、290g。
丈も小さければ、背骨の形がわかるほどガリガリの体。
さらに、完全に見えてない瞳。
キトンブルーはかろうじてグレーになりつつあるも、黒目部分は全く動かず。
目の前で指を移動させても目で追う気配すらない。
そして、よく見なければわからないけど挙動のおかしい後ろ足。
歩いているとふらりとつまづく。
よろける。
最悪転がる。
食事やトイレの最中、踏ん張る足は震えてる。
怪我はない。
痛そうなそぶりもない。
でも、動きにおかしさがある。

先生は、ゆっくりゆっくり子猫を触って言った。
「後ろ足、太もも部分にほとんど肉がついてない。
 このせいで力が入らないなら、栄養とって成長していけば改善されるかもしれない。
 でも、なんらかの障害の可能性ももちろんある。
 だけど、この時点ではわからない。
 将来的にも、断言できるとは限らない」

里親探しのハードルは、とんでもないレベルに跳ね上がった。

病院でミルクを購入し、ねこもり家に帰宅。
途中でお姉ちゃんを送っていったが、終始はなに任せる結果になってしまったことを申し訳ながって自分にできることを探してくれていた。
これはとてもありがたかった。
子猫を頼んでくる人は、人に頼んだことによって自分はいいことしたと完結する人と、人に押し付けてしまったと申し訳なく思う人にわかれる。
幸い、お姉ちゃんを含めはなの周りは後者の人が多かったけれど、これが前者の人ばかり相手にしていたら猫を助けることさえ嫌になっていたかもしれないなあと思う。
気遣いひとつ、思いやりひとつで、変わるものは確かにある。

子猫は1階リビング横の「これがないと俺の夏が始まらないと言い続けて数年経過したトレーニングマシン」が放置してある部屋に隔離。
余っていた段ボールに、友人のくれた犬用ベッドと毛布を突っ込み即席ハウス完成。
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すてき。

気に入った模様。

けれど、ミルクは
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いらにゃい。

まさかの拒否。

飲めないのかと猫部屋ひっくり返したら出てきた哺乳瓶やシリンジで吸わせてみるも
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いやにゃ。

さらに拒否。

何が気に入らないのか。
むしろ、キッチンでは食べる必要性皆無のつっくんやいちニコがそれをよこせと叫んでいたのに。

ふと、いちニコミラが食べていたベビーフードがひとつだけ余っていたのを思い出した。
子猫時代の3人ががっつりお世話になったロイヤルカナンのマザー&ベビーキャット。
思い付きだったけれど、そのベビーフードをミルク掛けにしてやるとようやく食べた。
やっぱり、歯が生えそろってるのは伊達ではないらしい。
乳歯だって生えそろえばゴハンがいいよね。

永久歯のミルク党がキッチンで待ち構えてるけどな。

次の話に続く。