今日の朝。
水曜からの異変が決定的になったごまを病院に連れて行った。
そこで、手術の時に切除した癌の生体検査の結果を知った。
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リンパ腫。

3年前とは違う型。
再発ではない。
新たな癌に罹ったという事実。
そして、また抗がん剤が始まるという事実。

わかりやすい違いを言えば、3年前のリンパ腫は腫瘤のできにくいタイプ。
今回のは、腫瘤ができやすいタイプ。
つまり、今回切除した腫瘤は高い可能性でまたできるということ。
そして次の切除手術は、現実的ではないと思われる。
検査結果の紙は、恐ろしいほどの現実を直球で教えてくれた。

余命は、約2か月。
抗がん剤をすれば、平均値はもう少し伸びる。
ただ、ごまの抱える問題はリンパ腫を抱えた小腸だけではないのだ。
膵臓と十二指腸に炎症。
大腸の機能低下。
食道拡張症。
難治性口内炎。
「よく生きてる」
前に先生に言われたとおりだとはなも思う。

術後、ごまは調子が良かった。
こちらがひやひやするほど元気に動き回り、お腹がすいたとゴハンを要求した。
さすがに消化のいいものをお腹に入れたかったので要求は却下。
3日間は液体のリキッド状ゴハンを胃ろうチューブから注入。
4日目からは、id缶をフープロでどろどろにしたものに変更。
少量からゆっくりならす。
そこでようやくおやつも解禁。
こちらも量は少しずつ。
大好きなおやつをスプーンひとさじだけもらって、大喜びで大切に食べた。

ここまではよかった。
この後、急にごまの様子がおかしくなる。
ある程度まとまったidを胃ろうチューブで入れたとたん、ごまの動きが重くなった。
それまではゴハンが足りないおやつが欲しいと騒いでいたのに、じっと籠ったまま出てこない。
それは、食事のタイミングの6時間を過ぎても変わらなかった。
12時間が過ぎた頃、耐えかねておやつを出してみた。
ごまは喜んで食べ始めたものの、3分の1をそっと残した。
お腹が重い、そう言ってるようだった。

その日、はなは病院に行ってリキッド食を2本購入した。
idはいくらどろどろにしても、リキッド食よりはるかに重い。
ごまの消化能力がidに追い付いてないのかもしれないと思ったからだ。
一旦idをやめ、リキッド食に戻す。
idへの移行は、最初の想定よりゆっくりしたペースになっていた。
これが水曜日の話。
そこから少量のIdとリキッド食を交互に胃ろうチューブに入れる生活が始まる。
けれど、はなはそれでもごまの元気がゆっくりなくなっていくのを感じていた。

金曜日の昼。
少しだけ多めの、それでも1日量にはまだ圧倒的に足りないidを胃ろうチューブで注入した。
胃ろうチューブは、最初に3mlのぬるま湯を入れて水流が通ることを確認し、ゴハンを入れて、最後に5mlのぬるま湯を入れてチューブがゴハンで詰まらないよう中身を流すのが一連の流れだ。
なのに、最後のぬるま湯がうまく入らない。
いつもならすんなり入る5mlを、少し力技で押し込めた。
なんでだろうと思いながら、少しだけ嫌な予感を感じていた。

金曜日の夜。
たっぷり時間をあけても、ごまたんはお腹がすいたと言ってこなかった。
しょうがないので、こちらから胃ろうチューブを促す。
でも、最初のステップのぬるま湯3mlは1mlたりとも入っていかなかった。
押しても押してもシリンジの目盛りは進まない。
何か空気のようなものに押し返されている感触がある。
押し込めている手を離せば、反動でシリンジの栓が吹き飛び、チューブから逆噴射が起こった。
一旦シリンジを抜いてチューブを確認しても、どこかで詰まっているような様子はない。
もう一度は、まーちゃんとふたりで確認しながら実行した。
それでも結果は同じ。
idどころか、ぬるま湯すら入らない。
その時点で夜8時。
昼食からは8時間が経過していた。

お腹がいっぱいなのだろうか。
いや、最後の胃ろうチューブは8時間前だ。
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それからは水しか口にしていないはず。
おかしい。
おかしい。
3年前に1年間胃ろうチューブを入れてきたけど、こんなことはなかった。
もしやとごまの大好きなおやつを差し出せば、ふたくちくらい食べてやめた。
珍しく残したと思った前回よりも食べれていない。
おやつも入らないほど何かでお腹がいっぱいになっている。
消化能力が下がっていて、通常のペースでは食事を消化できていないのかもしれない。
だとすると、胃ろうチューブで1日の食事量を入れるということさえ不可能だ。
一晩中眠ることさえうまくできないごまを撫でながら、はなはいろんな可能性の道がどんどん閉ざされていくのを感じていた。

翌土曜日の朝。
試しに朝一で胃ろうチューブにぬるま湯を通すと、見事に通過。
まるで夕べのことなんてなかったかのような通りぶりに、胃ろうチューブが物理的に詰まっているという可能性もここで消えた。
ごまのお腹で何かが起きてる。
朝一番で病院に駆け込んだ。
そして、リンパ腫だったと知らされることになる。

先生の見立ては、おおむねはなと同じだった。
聴診器をあてた結果、お腹の中が全く動いてないということはないらしい。
ただ、状況を聞く限り動きが悪いというのは間違いなさそうだ。
ごまのお腹の中では、リンパ腫だけでなく膵炎や十二指腸炎や腸炎が慢性的に起こっている。
それはお腹をあけたからわかる。
でも、どれが悪さをしているのかまではわからない。
とりあえず、本当はまだ胃ろうチューブの傷が固定しないからよくないというのは承知の上で、皮下輸液を再開することになった。
お腹の流れを手助けするために、ここ数カ月ずっとやってきた日常だ。
そして、食事の量も1日にこれだけ必要というのは意識せず、入る分だけ欲しがる分だけあげていくことになった。
どの道、胃ろうチューブでも入らないんだから他にやりようがない。
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ここからはもう、
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今のごまにしてあげられることをこなしていくだけだ。

そして。
話を聞きながら唐突に理解した。
ああ、ごまは死ぬのか。
あとどのくらい時間が残されているかわからないけど、遠くない未来に逝ってしまうんだ。
年も越せないかもしれないんだ。
いつも通り会計をすませ車にのりこんだ瞬間、涙が止まらなくなった。

体重は2.9kg。
ついに3kgを切った。
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デブだったごま。
食いしん坊だったごま。
甘えるのも甘やかすのも大好きなごま。

長い間本当に頑張ってきてくれたけど、
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たぶんこれが、最後の戦い。