昨日。
ごまは病院に行ったけれど、触診以外は何もしなかった。
体重2.7kg。
まっすぐ歩くだけでふrらつく体。
その体重を見て、はなは「抗がん剤はもうやめる」ことを決意した。
理由は、その瞬間に言葉になった。

ごまの命を削っている理由が癌ではないから。

ごまは今、胃ろうチューブで一日に必要とする栄養の3割強を摂取している。
逆を言えば、3割強しかとれていない。
ごまの腸は、炎症も起こしているし、菌のバランスも崩れているし、動きも悪ければ吸収も悪い。
ごまの腸が、なんとか1日で消化吸収できる食事量が3割強で精一杯なのだ。
そして、その3割強で体が保てているかの答えが2.7kgなんだと思う。

普通に老いるなら、減った食事量と消費カロリーが釣り合っていくこともあるのかもしれない。
でも、ごまの中には癌がいる。
2度めの悪性リンパ腫。
正常ではない体。
すでにごまたんは満身創痍だ。

もし今癌を治療できたとしても、ごまの食事の摂取量はきっと変わらない。
癌で病んでいる状態と、食事が必要量取れない理由がイコールではないからだ。
仮に癌が治っても、ごまの食道拡張症も難治性口内炎も膵炎も十二指腸炎も、そして3割強しか消化しきれない腸機能も残るのだ。
ごまの腸の不調は、癌由来だけではない。
前回の悪性リンパ腫を戦い抜いた後遺症みたいなものだ。
ずっと薬は飲んできた。
それでも改善されることはなく、弱った腸機能は弱ったまま。

そう思ったとき、ようやく打つ手がないことに気がついた。
根本的な食事量の問題に対して、やれることはない。
毎日栄養点滴をすることも一瞬脳裏をかすめたが、それが幸せかと問うて打ち消した。
この減少ペースでいけば、ごまたんはそんなに長くはもたないだろう。
医療関係者じゃなくてもわかる。
ただの引き算だ。
もういい。
もうわかった。
もう苦しさはのせたくない。
どうか残り少ない時間を気分良く過ごせるようにしてやりたい。
診察室で、ぼとぼと涙をこぼしながら、はなは先生にそう告げた。

先生は落ち着いて話を聞いた後、わかったとうなずいてくれた。
ただ、エルアスパラギナーゼに関しては、続けてみてはどうかと提案された。
今回の1週間で、大きな効果はなかったものの副作用もなかったことは立証されている。
それに、おなかの謎の腫瘍は今回大きくなってはいなかったけれど、もしかしてエルアスパラギナーゼが効いていた可能性も否定はできない。
エルアスパラギナーゼ自体、3週間に1回、皮下注射の抗がん剤だ。
負担は少ないし利点は大きい。
相談の結果、治療としてこれだけは継続していくことになった。

後は、家でのケアがメインになる。
ス テロイド、プリンペラン、エンロクリアという薬は胃ろうチューブで体内へ。
皮下輸液は、2日に1回100mlに増やした。
病院に頼るのは、物資や薬を買いに来るか、嘔吐下痢等の症状が出た時の対応がメインになる。
「…どうにかしてあげたいけどやれることがない」
先生はそう言って険しい顔でごまを見つめていた。

ごまは、あとどれだけ時間があるのだろう。
ここから、どうなっていくんだろう。
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今日も
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ごまたんは、
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ご機嫌な1日を過ごしている。