2020年4月26日日曜日。
はなは子猫を2匹保護した。
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左がひばり、右がきら。
300グラムの小さな子猫。
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これは、その時のお話です。

2020年4月26日日曜日。
最初に気づいたのは、早朝4時ごろだったと思う。
パソコンで買い物をしていると、外で子猫の鳴き声がした。
最近うろついている黒毛の野良猫親子の子供だろう。
ここ3日ほど家の近所で鳴いてるのをよく耳にする。
実は、その母黒猫は昔捕まえて避妊手術だけでもしようと思ったことのある野良猫だ。
それは見事に失敗し、次のチャンスのないまま今年ついに子供を産んだらしい。
赤ちゃんに毛の生えたような小さな猫の鳴き声は、一生懸命母を呼ぶ声だった。

夜更かししたはなが、次に違和感を感じたのは朝6時だった。
子猫の声がまだ聞こえている。
かれこれ2時間は鳴いている計算だ。
疲れてきたのか、鳴いているよりも休んでいる方が増えてきた。
おかしい。
母猫がそばにいないのか?
窓を開けると鳴き声はさらにクリアに届いた。
子猫は間違いなくひとりだと思った。

パーカーを羽織って玄関を出る。
明るくはなっているけれど、町はまだ起きてはいない。
なのに、斜め向かいのおばちゃんが外に出てきていた。
「近くで子猫の鳴き声がして・・・」
困った顔でおばちゃんは自分の家の庭を見回していた。
近くに寄ると、確かに子猫の声はおばちゃんの家付近からしていた。
どこですかねえなんて話をしながら、庭のすみに目を凝らす。
いない。
すごく近くで声はするのに。
庭から目線を下げると、ふたの開いた側溝があった。
しゃがんでのぞくと、小さな毛玉のような子猫がひとり空に向かって一生懸命鳴いていた。

子猫を見つけたと告げると、おばちゃんはほっとした顔をした。
そこで初めて、おばちゃんが手にほうきを持っていたことに気がついた。
その向こうに、少し離れてはいるが母であるはずの黒猫の姿も見つけた。
ああ、追い払いたかったのか、と思った。
猫が嫌いな人はゴマンといる。
それを責めることはできない。
そもそも野良猫を増やしているのは猫嫌いな人じゃない、無責任な猫好きだ。
猫好きの敵である、無責任な猫好きだ。
猫嫌いな人からしたら、そこの違いなんてあってないようなものだろう。
「お母さん猫がそこにいるので、私たちが離れれば子猫を連れて行くと思いますよ」
だから大丈夫ですよと笑顔で伝えて、帰宅した。

なのに。
午前11時。
はなはもう一度外に出ていた。
鳴き声がやまない。
はながそばを離れて5時間はたつ。
午前4時頃の勢いはないが、確かにまだどこかで鳴いている。
さっきいた側溝にはもういない。
今度こそあのおばちゃん宅の庭から声が聞こえていた。
不安そうに家から出てきたおばちゃんに断って庭を捜索させてもらうと、縁側の下の植木鉢の奥に、小さな毛玉がさらに小さくなろうとうずくまるように震えていた子猫を見つけた。
見回しても母猫の姿はない。
何があったのかはわからないけれど、5時間鳴き続けてる子猫を放置するのは異常だ。
いろんな覚悟と共に、そっと子猫を抱き上げた。

子猫をキャリーに入れて、ちゃんと観察してみる。
キジトラの小さな小さな子猫。
声はかすれ気味だし少々パニックを起こしているが、元気はあるようだ。
ひととおり見た感じ外傷はなさそうだ。
まずは病院に行ってから考えようと外へ出ると、庭で坊主頭をバリカンしていたゆたかくんが神妙な顔で近づいてきた。
「お姉ちゃん、

 もう一匹声が聞こえる」

うん、衝撃。

神経を集中させて音を聞く。
さっきから泣き続けているキャリーの中の子猫の鳴き声でわからなかったけれど、確かに反応するように小さな声が聞こえる気がする。
でも、小さすぎて方向がつかめない。
ゆたかくんとふたり、家のまわりをうろうろしながら耳を澄ます。
すると、2軒隣のおばちゃんに話しかけられた。
「ここ数日子猫の声がするけど見つけられない。
 今も小さく聞こえるけど姿がない」
やっぱりはなの気のせいじゃなかった。
おばちゃんとゆたかくんと、手分けして小さな子猫を探す。
声の主は、間違いなくキャリーに入っている子の兄弟だと思われる。
キャリーの中の子が鳴くと、それに返事するように声をあげる。
それ以外ではあまり声を出さないようだ。
でもどうやらはなとおばちゃんちの間の、はなの隣家あたりで聞こえてくることがわかった。
隣の家のピンポンも鳴らして、事情を話し協力を仰いだ。
快くOKをもらって、今度は庭から駐車場から這いつくばって子猫を探す。
そして気づいた。

家の下から声が聞こえる。

家の下、基礎の部分。
コンクリートで固めてある、家を支える土台。
まさかと思いつつ、金網になっている空気口をひとつずつのぞいていく。
すると、ひとつの空気口が中にホースを入れるために部分的にカットしてあるのに気づいた。
隙間はほんのわずかだが、キャリーに捕獲したあの子猫サイズなら通る。
頭の中で、ここだったら大変だなと思った。
そして、物事は往々にしてそういう場所に答えを持つ。
一番道路に近い空気口をのぞいた時、持ち歩いていたキャリーの中で子猫が大きく鳴いた。
それにこたえるように、空気口の中から大きな悲鳴にも近い声がした。
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ここにいる。

スマホの懐中電灯を使って中を照らす。
その光に反応して、何かが動く気配があった。
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闇の中から現れた子猫は、基礎のなかで空気口の金網にしがみつき全力で鳴いていた。

探していた全員が集まってくる。
見つけた。
あとは助け出すだけだ。
遠くに、こちらを伺う母猫の姿もあった。
この数日、自分ではどうにもできなかったんだろう。
家主に許可をもらい、ゆたかくんが床下にもぐる。
2軒隣のおばちゃんが、手作りでたもを作ってくれた。
外から照らすライトと子猫の絶叫を頼りに基礎の中を進み、2度目の進撃で子猫を捕獲した。
30分以上床下を這いずり回ったゆたかくんは、真っ白になって帰宅した。
その頃には、母猫の姿はなくなっていた。

その子猫が、
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今うちにいる。

せっかく助かった命だから、幸せになって欲しいと思う。
そんなふたりは、今日も元気に食べて寝て遊んでいる。