昨日から、
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れんねが自力で立てなくなった。

なんとか足を立てても、開脚するように滑ってしまう。
踏ん張りがきかないのだ。
力が入らない。
関節も思うように動かない。
かつて6kgをこえていた体重は今わずか1.9kg。
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撫でた体は、どこもかしこも骨と皮だった。

7月に入ってから、れんねの状態は目に見えて悪くなっていった。
少しふらつくようになったと思ったら、まっすぐ歩けなくなり、段差が上れなくなり、頭が支えられなくなり、そして今、まともに立ち上がることもできなくなった。
6月に19歳になったれんね嬢。
抱えた病は、胆管炎と腎不全と口内炎と進行した膀胱癌。
だけど、それらすべてを「老い」が追い越していった。
痩せて、肉が落ち、体力が消える。
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あまりに痩せすぎて、猫にはできにくいという床ずれがいくつもできた。
そして、ゆっくりと現れたはずの認知症は、あっという間にれんねの思考をのっとり日常を知らない世界にしてしまった。
先生には、痙攣したり瞬きをしなかったり反射の動きがなかったりと脳の神経に何かが起こっているような反応をしていると言われたから、内情は認知症だけではないんだろう。
今のれんねはもう、ゆたかくんのこともまーちゃんのこともわからない。
トイレの場所も、弟妹の存在もわからない。
病院に行っても、きょとんとしたままゆっくりと診察台に横たわりうたたねを始めてしまう。
かろうじてはなにすべての要求をぶつけては来るが、はなをはなと認識できているのかこの人は何かを言えば何かをくれる便利な人だと思っているのかはもうわからない。
わけのわからない思考で、1日中家の中を徘徊するれんね。
今までしてきた看護とは違う、1日中目を離すことのできない介護の始まりだった。

真っ先にしたのは、階段の下にヨガマットを敷き詰めることだった。
足元もおぼつかない体で、れんねは日に何十回と階段を上っては下りた。
そして、同じ数だけ転がり落ちた。
見かねて、閉じ込めたり行かせないようにしたこともある。
認知症だからか、れんねは諦めることなくアタックし続けた。
今までできていたことをやめさせるのは難しい。
それはすぐに理解できた。
だから、れんねが危なくないよう家の中を見直した。

口内炎は相変わらずひどかったので、食事には苦労した。
先生に頼み、痛み止めを強くしてもらい連日通った。
今は認知症が進み、少し痛みに鈍感になったので数日に1回でごまかせるようになっている。
毎日まぐろの刺身を食べていたこともある。
プリンばかり食べていたこともある。
何ひとつ食べてくれなかったこともある。
今は、お店レベルの品ぞろえになったちゅーると、ジャージー牛乳プリンを主食に、たまにゴハンやスープやパウチを食べる生活をしている。
栄養価はもうあまり考えてはいない。
食べたいものを食べれるだけ口にするだけで精一杯なのだ。

治療は、毎日の皮下輸液が70ml。
口内炎の痛み止め注射はその都度適宜。
飲み薬は、膀胱の炎症止めの錠剤が朝晩、癌の痛み止めが晩に1回。
あとは、2日に1回耳に塗る食欲増進の塗り薬。
これだけ。
積極的な治療は、なにひとつしていない。
れんねの体は、ゆるい抗がん剤も少しきつめの薬も受け入れられる状態ではなかったから。
はじめから終わりを見据えて向き合ってきた。
大事にしたのは、QOL。
クオリティ・オブ・ライフ。
今を生きるれんねが、少しでも楽に穏やかでいられるように。
れんねは、少しでも叶ったと思ってくれただろうか。
こちらの言うことを理解していたれんねはもういない。

れんねがうまく立てなくなって、悲しいかな、はなにはようやく時間ができた。
腕の力だけで移動することはまだできるが、前と違って目が離せないということはない。
目を離しても、横になってる場所が1m動いたとかどこかの段差が上がれず詰まっているとか、そんなレベルだ。
中途半端に体が動くからこそ起こる危険はぐんと減った。
今も、開けてもらった洗面所の中で横になっている。
風が通って涼しいらしい。
最近のお気に入りだ。
遠巻きながらずっとサポートしてくれていたまーちゃんが、昨日の皮下輸液の前に「れんねの顔が変わったな」とつぶやいた。
頬がこけ、目がうまく開かなくなり、結果として吊り上がったような顔になる。
目のくりくりした毛のフカフカした猫には珍しいこの表情。
何度か見てきた。
知っている。
記憶にある。
亡くなる前に、こういう顔を見せた子がいた。
一番近くでは、うーがそうだった。
亡くなる3日前、明らかに顔つきが変化した。
れんねも、たぶん遠くはないんだろう。
19歳、人間でいえば100歳近い。
よく頑張ったと思ってる。
それはわかってる。
でも涙が出る自分の感情をうまく整理できずにいるこの状況はなんなんだろうな。
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何人おくっても、絶対に慣れはこない。