2023年3月27日早朝7時頃。
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あと数か月で19歳になるところだったまめが永眠した。
老衰だったと思う。
まーちゃんが出勤して、はなが寝落ちして、はっと起きるまでの1時間ちょっと。
その間に逝ってしまった。
しっかり目をあけて、意識はぎりぎりまであったと思う。
家庭内野良猫は最後まで家庭内野良猫を貫いたようだった。

去年の暮れから、みんなを心配させていたのは兄弟のあじくんのほうだった。
肝臓の数値がおかしなことになり、まともに立つことも食事をとることもできなくなり、一度は治療を諦めて寿命を受け止めようと決意。
しかしそこから謎の急回復。
まじで謎。
なにがよかったのかまったくもって謎。
看護しているはなも、治療している先生も、
「…これは、読めない」
と思った奇跡。
寝たきりの状態からドライフードを食べて日常生活が何不自由なくできるところまで回復。
だから、今年に入ってからも、気にしていたのはあじくんの体調だった。

あじくんの食事量を増やすために、手当たり次第のドライフードとパウチちスープとおやつを用意していたねこもり家。
そのかいあってか、一時は3キロきったあじくんの体重も無事4キロまで回復した。
そしてまめもその豪華ラインナップを見ていたらしい。
あじくんについて少しもらおうとするようになり、食事時には姿を見せるようになり、最終的にはパソコンデスクに座っているはなの50cm上までやってきて、
「おいしいゴハン、ほしい」
と要求してくるようにまでなった。

約19年間、人間嫌い人間怖いが先行し、たまにちゅーるにありつける以外はおいしいものとは無縁だったまめ。
一応言い訳させてもらうと、まめにもおいしいものをあげようと努力はしてきた。
でも、差し出された瞬間に本人はビビって逃亡。
おかれた皿はまめより先に気づいた誰かが食。
帰ってきたまめの前にはカラになった皿。
ほんとうにどうしようもなかったのである。
それが、まめの中で何がきっかけになったのか「おいしいゴハン>恐怖」に変化。
嬉しかった。
まめも嬉しかったかもしれないが、はなもほっとするくらい嬉しかった。
引きこもりのくせにパソコンデスクの上まで来てはなを見据えて鳴く姿は、おいしいものが食べたくてわがままを言う子供のようで可愛かった。
老齢で痩せたとは言え、歯も丈夫なまめは何でもよく食べた。
ドライフード、ウェットフード、スープにまぐろ、おやつにお肉。
おいしそうに食べる姿に、救われたのはたぶん人間サイドだったと思う。
人間嫌いで、人間が怖くて、いつも自分の決めた巣に引きこもっているような生活だったまめ。
大好きだった育ての親ごまたんが逝ってしまって、心のよりどころも失っていた。
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久しぶりのまめの嬉しそうな姿は、はなもまーちゃんをも喜ばせた。

まめが痩せた理由は、なんとなく察しがついていた。
老齢と、腎臓。
何年か前の検査で、まめは腎臓に問題があるのはわかっていた。
慢性腎臓病だと思われるその数値は、悪いは悪いけれどなんとか年齢と折り合いをつけながらまめに日常生活をくれていた。
そして、
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その検査時のまめの怯えっぷりに
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「まめは治療よりもいつもの生活を優先する」とはなとまーちゃんは決意した。
がたがたと震え、瞳孔はひらき、抱き上げただけで恐怖のあまりおしっこを漏らしてしまう。
家に帰っても食事もとれず睡眠もとれず、また連れていかれるのではないかとそこそこ慣れたはなとまーちゃんとの関係も破綻する。
はなは、まめに幸せな時間を過ごしてほしかった。
痛みやしんどさはできる限りとってやりたいけれど積極的な治療よりも穏やかな日常を優先する。
なんせ相手は人間なら90歳近いまめだ。
生き方だけではなく、死に方も考えて覚悟しておく必要があった。

そんなまめの痩せ方が明らかに加速したのは今年の2月だった。
一気に痩せた。
久しぶりに見た背中があまりにもがりがりで衝撃を受けたのを覚えている。
背骨とあばらが浮き、肉の落ちた後ろ足は踏ん張りがきかず飛べなくなった。
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まめの行きたい場所にステップはステップを用意した。
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お前じゃない。

後ろ足にほぼ肉のなくなったまめを見て思った。
「ああ、これはもうそんなに遠くないな」
老衰での死は、わりと同じような段階を踏むことが多いとはなは思っている。
まずはゆっくりと今までではありえないレベルまで痩せる。
そのせいで動きが悪くなる。
寝ることが増えたり、トイレの粗相や徘徊もこのへん。
そのあと、ふと食事がとれなくなって、寝たきりになって。
そうなると残されたのはわずか数日程度。
意識がだんだん朦朧とし始めて、反応が返ってこなくなって、おなかの上下だけで生きてるかどうかを確認する状態になって。
枯れ木がポキリと折れるように静かに逝く。
老衰は苦しくないと言うが、はなもそう思う。
あれほど穏やかな死はない。
まめもそのルートに乗れただろうか。
人間は、それを邪魔しないように生きてる間の不自由をほんの少しだけ手伝うだけだ。
よろよろの体で、それでもご飯はしっかり食べるし、トイレも自分でしにいくまめ。
まめはひとに介助されるのは嫌だろうから、本当に何もできなくなるまで手も出せない。
その頃の通院は、食べたいのにもごもごするようになって一度だけ口内炎の痛み止めをうってもらった1回のみ。
先生も、主だった治療は何もしないという選択を尊重してくれた。
最期を意識しても変わらぬ日常を優先する日々だった。

はなのスマホを見ると、3月15日のまめの写真がある。
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あれだけ喜んでいた特別な食事が食べきれなくなった日だ。

食べれなくなったことに気づいて慌ててカメラを向けたのは、もう遠くない未来まめの姿は写真でしかた見れなくなると思ったからだ。
各種取り揃ったドライフード、パウチ、缶詰、スープにおやつ。
口を付けて食べようとはする。
ものによってはひとくちふたくち食べれるものもある。
でも、もうそれで充分。
スープなら液体だけ。
パウチなら上澄みを救う程度。
ちゅーるでも頑張ってふたくち分。
食べたいと思う気持ちに体がついてこない、そんな感じだった。
体はさらに痩せていた。
とにかく水だけは欲しがるけれど、固形物は食べられない。
水飲み場のそばに居座っていることも増えた。
食事はともかく、とにかく脱水がひどくしんどそうで本人もひたすら水を欲していたので、先生と相談の上皮下輸液は適宜いれてやることにした。
(最終的には、数日おきに3回目入れたところでやめた)
食べれるものを食べて、行きたい場所に行って、寝たように寝る。
最期の瞬間までどれだけその穏やかな生活を維持できるか。
してやれることはとても少ない。
見つめることしかできない時間は、終わらないでほしいという願いと何もできないという無力感が混在していた。

まめは、最後の最後まで頑張っていつもの生活をしようとしていた。
2週間のあいだ、たくさんは食べられなくても食事は楽しみにしてたし、好きなメニューならひとくちふたくちは頑張ってくちにしていた。
トイレは、間に合わなくてそこらの毛布にしてしまうことはあっても、最後の最後からだが動かなくなるまで這いつくばってトイレに行っていた。
穏やかな時間だったと思う。
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人間が苦手なまめは猫とはうまくいっていたようで、まめの寝床に兄弟のあじくんや仲良しのメロが入り込んで一緒に寝てる姿もよく見た。
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へろへろになりながら1階と2階を往復していたのは、かつて長いこと1階でくらいしていた時代に頭が切り替わった部分があったのかなと思ってる。
ゆたかくんが来るまで、猫部屋はずっと1階だった。
覚えていてくれたんだろうか。
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あまりにも1階の部屋の窓際で横になっていることが多かったので、お水と大きな爪とぎを置いてやったら、気に入ってずっと爪とぎの上に横たわってくれていた。
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奪うな。
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それは今、子供らが全力でお気に入りにしている。
まめと子供らが仲良かったこと、はなはこの時初めて知った。

食事がまったくとれなくなったのは死ぬ半日前だった。
最後に食べたのはプリン。
刺身もちゅーるも嫌になって、何か食べれないかととろけるプリンを差し出したらかぶりつき。
めちゃくちゃおいしかったみたいで、食欲無しのところからプリンで1日半は伸びたと思う。
そのプリンにも首を振られ、万策とあきらめがついた。
もう逝くための準備を体が始めたということなんだろう。
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そのすぐあとに立ち上がれなくなり目が見えなくなった。
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けれど、死ぬ直前まで明確に意識はあった。
死ぬまでずっと鳴いていたのは、動かなくなったからだが理解できず怖かったからだろう。
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夜通しまめに張り付いたはなは、何もできずたまにその背を撫でて鳴き声に返事した。
撫でようとした手は、怯えたまめにがぶりと噛まれることになった。
最後の瞬間は思ってたよりも早く来た。
出勤するまーちゃんが声をかけてからはなが寝落ちしたわずか1時間の間にまめはそっと旅立った。
跳ね起きたはなが目にしたのは、魂がぬけたばかりのぐにゃりとしたまめ。
撫でたからだは冷えていた。
死ぬ間際まで意識があったのか、しっかり瞳は開かれていた。
臆病者だったまめが、19年弱頑張って生きてきた証。
最期の最後まで頑張ったんだよね。
寝ちゃってごめんね。
それとも、そこでも人見知り発揮して、見られないように逝ったのかな。
「死んだら触り倒してやるから!」なんて言っていた体は柔らかな毛に包まれていて、小さく軽く骨の形が浮き上がっていた。

1日うちでゆっくりしたあと、
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お土産をぎゅうぎゅうに持たせて火葬に送った。
なんとなく、まめが人間嫌いなことを知っているので構い倒すのは気が引けた。
控えめに頭を撫でて、たくさんのお礼を言った。
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おつかれさま、まめ。
向こうでごまに会えたかな。
あたしはまめがいなくなって寂しいよ。
たまには夢に出てきてね。
大好きよ。
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また、会おうね。