昨日は、あいにくのくもりだった。
朝起きると、まーちゃんの横で寝てたはずのライライは、リビングのテーブルの上に戻されていた。
まーちゃんが移動させたのだろう。


相変わらず眠っているようにしか見えない顔だ。
おはよう、と声をかけて、冷たくなった頬に触れた。


猫どもは、いつもと変わらないように見えた。
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こっちゃん。
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ちー。
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れんね嬢。
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あじくん。


お別れをすませたのかはわからないが、この1日でまめ以外は全員、ライライに会いに来た。
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ルナ様は、少しだけ顔を見た後、ずっと隣室のFITSケース上にいた。
べたべたした姉妹ではなかったけれど、仲はよかった。
今、何を思うんだろう。
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はなが、ライライの棺を用意するのをじっと見つめていた。


ライライは、普通の子だった。
とりたてて、賢いわけでも、目立つことするわけでも、悪いわけでも、手がかかるわけでもない。
少しだけみんなよりも後ろで、いつもにこにこしてる、そんな子だった。


その秘めた母性に気づいたのは、ごまがあじくんとまめを育てている時だった。
ごまにべったりだったふたりがライライにも気を許してると知って、注意深く見てようやく気づいた。
ごまが育児に手が届かない瞬間、代わりに母役をしてくれていたのがライライだった。


そして、
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ゆたかくんちのトム、
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実家のふうたくん、
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ねこもり家末っ子ちー。


みんなライライがお母さんだった。


その頃には、ごまの父性は尽き果てていて、ライライだけが母を求めて鳴く子猫に反応した。
お尻をなめて、毛づくろいをしてやり、まだ毛の生えそろわない坊主にそっと寄り添う。
もちろんはなも全力で子育てしたけれど、ライライもまた、確実にあの子たちに愛をくれていた。


何かを特別好きだというのがない子だった。
いただけるものをいつもおいしそうに食べていた。
はなに甘えることがないぶん、倍率ゼロのまーちゃんをひとりじめしていた。
糖尿病が発覚するまでは、夜はまーちゃんと一緒に寝ていた。
具合が悪かったのか、最期の2カ月はリビングを巣にしていた。
ゴハンだって出されたものを頑張って食べた。
わがままを言うことは、最後までなかった。


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家じゅうありったけのウェットフードとおやつを詰める。
毛布は、具合悪くなってから最期まで、ずっとライライが使っていたものを綺麗に洗って乾かした。
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ふたつしかないエビだけど、ひとつ進呈。
あっちに持っていっていいよ。
腕の間にはさんでやった。


これから、実家によってみどりちゃんをひろって火葬場へ行く。
この家に、ライライが戻ることはもう2度とない。
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そっと、棺のふたをした。
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ルナ様は、ずっとそれを見つめていた。


2階猫部屋に眼鏡を取りに行くと、ちーが追いかけてきた。
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何か言いたげだけれど、黙ったまま。
それ以上こちらに来ることもない。


「ちーちゃん、ライライ連れていくね」
そう言って、背を向けた。


玄関で棺を抱えようとしたとき、階段上からちーがかけ下りてきた。
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鼻と頭で、なんとか棺を開けようとする。
そっとふたを開けてやった。
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ちーちゃんは、じっとライライの顔を見ていた。
鳴くわけでも、鼻をつけるわけでもなく、ただ、じっと。


鼻のいいこの子たちなら、ライライの体内に残った水分が腐っていくにおいもわかるだろう。
亡くなって数時間でおしっこはでたけれど、ガスと腹水は排出されないままだった。


顔を放したちーは、
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少し歩いては振り返り、
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少し歩いては振り返り、
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この距離で足を止めた。


ちーに見送られて、はなとライライは玄関を出た。


実家につくと、みどりちゃんに迎えられ、火葬できない缶詰を袋に入れなおしてもらう。
そして、みどりちゃんをのせてスーパーへ行き、マグロのお刺身とおやつを少し買って棺に詰める。
これでもう、あとは火葬を残すのみ。
こんな時に時間は、流れるのが異常に早い。


火葬場に車を止め、そっと棺をあける。
今日だけでも何度も開け閉めしたが、これをしめたら最後。
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ライライは、眠っていた。
静かに、穏やかに、何も変わらず。


涙がにじみ、世界がゆがむ。
ありがとう。
ごめんね。
幸せだった?
幸せだったらいいな。
ぴっくんとももんちと一緒に、のんびりしながら待っててね。
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手土産は、たくさんのゴハンとおやつ。
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そして、エビ。


さよなら、ライライ。
大好きよ、ライライ。
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朝曇っていた空は、晴れ始めていた。


みどりちゃんを送り届け、いろんなことを思い出しながら帰路につく。
何を思い出しても、まだまだ涙はこみ上げる。
こんなに早いとは、はなもまーちゃんも先生も、思っていなかった。
神様、いくら可愛いからって呼ぶの早すぎ。


玄関を開けると、2階で何かがドスンと音をたてた。
そして、猫扉を勢いよく通り抜ける音。
階段を駆け下りてくる音。
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ちーが飛び込んできた。


びっくりするはなをしり目に、
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ちーは玄関扉にへばりつく。
はなの足元をうろうろうろうろ。
いまだかつて見たことないちーの奇行に、頭の中に疑問符が浮かぶ。


でも、ピンと来た。
扉の隙間という隙間に道がないか探すちーの姿に、目頭が熱くなった。


ちーちゃん、はながライライをどこかへ連れていっちゃったと思ったの?


誰を思って泣いているのか、自分でもわからない。
でも、涙が止まらない。
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いつまでも、玄関の向こうを見つめるちーを、そっと抱き寄せた。