その時、はなは晩御飯を作っていた。
作業台の上にはお料理大好きつっくん。


1000回下ろしても2000回上ってくるつっくんに根負けしたのははなの方。
「ダメよ」を理解することは、きっと一生ないんだと思う。
つっくんは、根性で大好きなお料理を見る権利を強奪した。


鍋を火にかけながら、野菜を刻みつつ、つっくんを視界の隅に入れる。
無駄に1行程多い仕様。
それでも、はなの目の前に座ったつっくんは楽しそうに長いシッポを揺らしていた。


シッポに火が付くまでは。


人より長いつっくんのシッポがコンロの方へと方向を変えて、五徳から鍋肌をするりとかすめ、はなが「危ない」と思うまで、コンマ数秒。
酸素をたっぷりたくわえたふかふかシッポは、一瞬で炎に包まれた。


考えるより手が先に出た。
包丁をシンクに落とし、炎ごとシッポを握りつぶす。
そして、シッポを握られて跳ねようとするつっくんの体を反対の手で押さえこんだ。


心臓がばくばく音をたてているのがわかった。
部屋の中はたんぱく質が焦げたにおい。
頭の中には断片になったシーンとクエスチョンマークがたくさん浮かんでいた。


だから、そっとシッポを握りしめていた手を開いてみた。

現実だった。


つっくんのシッポは、燃えるとめちゃめちゃ臭かった。


幸いなことに痛くもかゆくもなかったつっくん。
シッポが燃えたことにも残念ながら気づいてない。


でも、自分のシッポの違和感は感じるらしい。
ふがふがとにおいを嗅いで思いっきり顔をしかめた後、念入りに毛づくろいを始めた。

むぐむぐ。

ここへんなにおいするの。


燃えたからね。



それにちょっとざらざらするの。


燃えあがったからね



しっかりおさえて

むぐむぐむぐむぐ。

べろべろべろべろ。


念入りに丁寧に素敵なシッポ復活大作戦。
目指せ焦げてない臭くないシッポ。


つっくんとっても頑張った。
普段さぼってる毛づくろいも一生懸命やった。
おかげでつっくんの大事なシッポは、

やっぱりまだチリってる。


気を付けよう、おバカな猫としっぽとコンロ。
かしこさのたね、早急にください。(泣)